Hinode LaboBlogオフショア開発BrSE(ブリッジSE)とはどんな人?

BrSE(ブリッジSE)とはどんな人?

オフショア開発において、エンジニアの質の重要性は言うまでもなく、それ以上に重要な職種として、BrSEという「翻訳 兼 エンジニア」というものがあります。私の経験上この人がどんなスキルセットなのかによって、プロジェクトが円滑に進むかどうかを、引いては成否すらを左右すると考えています。

HEDSPI、BrSEのキャリア

あくまで一つの指標として、ベトナムの大学にはたくさんの優秀な大学があります。
・ベトナム国家大学ハノイ校
・ベトナム国家大学ホーチミン市校
・ハノイ工科大学
・トン・ドゥック・タン大学
・カントー大学
・フエ大学
・ダナン大学
など。

その中でもハノイ工科大学は、ベトナムで初めてとなる技術系の総合大学で、ベトナムの理工系大学の最高峰です。
ベトナムの近代化と工業化における高品質な人材育成を目的として創設された大学です。
創設年:1956年
学生数:約27,000名
日本語の専門学科はないのですが、長岡技術大学(機械学系)や慶應大学、立命館大学への編入を目指す留学クラスで集中的に日本語を勉強することが出来る環境にあります。

HEDSPIとは、日本のITスキル標準(以下、「ITSS」)に準拠した実践的な情報技術教育プログラムを、ハノイ工科大学に開設し運営するプロジェクトです。

目的は、ベトナムと日本間を橋渡しすることができるITSSレベル3※相当のITスキルと、日本語能力試験N3以上の日本語スキルを持った人材を育成し、日本に輩出することにあります。

私がオフショア開発で出会ってきたBrSEの方達も、HEDSPIのプロジェクトを修了し、その後数年来日され、日本で就業されていたエンジニアがたくさんいらっしゃいます。

※ITSSレベル3:業務に必要な知識を持ち合わせ、独力で業務を進めることができるレベル

BrSEのスキル

BrSEはそんな厳しい競争に勝ち残ってきたエンジニアです。(会社によってはBSEと呼んだりします)
私が出会ってきたBrSEの方達のスキルについて解説したいと思います。

技術レベル
当然ピンキリではあります。
技術に強みが偏った人もいれば、言語に偏った人、それ以外のITスキルに偏った人など様々です。

私が出会ってきたBrSEの方達の技術レベルは非常に高いものでした。
私や他の日本側の開発メンバーも、該当の不具合の解決に手をあぐねている問題も、最終的に綺麗に解決してくれたことが多々あります。

日本語レベル
N2とN3の方々が非常に多いです。
以下私の感覚値での意見ですので、ご容赦ください。

N3
N3レベルですと、日本語で、複雑な要件を口頭で説明して、理解してもらうことが非常に困難だと考えています。
10年前のシステム開発と比べて、要求されるUIレベルや、機能設計などは極めて複雑で高度化しているように感じています。
それだけ技術が平準化しているということです。

また、ベトナムではあまり馴染みのない業種やビジネスモデルのシステムの場合、やはりそれの根本を理解したり、登場人物の意味やルール、引いては日本の商習慣への理解なども迫られます。

そうすると、なかなかN3レベルの日本語スキルでは、口頭での要件説明ではプロジェクトがうまく回らないため、きちんと時間をとって、資料を丁寧に翻訳してもらう方法でマネジメントを行う必要があります。

N2
N2レベルですと、口頭の日本語で基本的にはスムーズにやりとりができるレベルになってきます。
ですが、選ぶ言葉はなるべく親切に、わかりやすくする必要があります。
オフショア開発において、日本語でBSEへ指示を出すコツ、TIPS
海外の方と仕事を始める前までは気付きませんでしたが、日本人同士で仕事をしている時、本当にあいまいな日本語で仕事をしていたことに気付かされます。
日本人同士であれば文脈で理解できるやりとりでも、海外の方と仕事をする時は、TIPSに記載されているように、なるべく正確で分かりやすい日本語を選んであげる必要があります。
また特に技術的な用語をチャットでやりとりする時は、カタカナではなく英語で表記してあげた方が理解しやすいようです。
カタカナは理解してもらうスピードを遅める要因でもあるようです。

なお、口頭での説明で、要件は理解してくれますが、相手にとっては日本語は外国語であるため、やはり丁寧に資料を用意して、きちんと翻訳を行ってもらうことが必ず必要となります。

N1
N1の方々とお仕事すると、ほぼ日本人と話している感覚でした。
上述のTIPSのようなことを気にせずとも文脈を汲み取って、即座に理解できる方々だと感じました。
ここまで日本語が上手ですと、逆にこちらが甘えて曖昧な日本語を使ってしまいそうになります。
彼らと仕事をする時には、対日本人と同等と考えて、接してしまいますが、それでもなるべく平易な日本語を使ってあげたり、世界共通後の英単語を使用してあげたりする配慮をするに越したことはありません。

BrSEとの仕事の仕方

仕事の流れはいくつかありますが、上流工程の設計はほとんど日本で行われることが多いです。
・クライアントから要件RFPを頂く
・日本側で設計、仕様書を書く(画面設計は必ず日本が良い)
技術的な仕様書(フローチャートやシーケンス図、ER図など)については、開発チームやBrSEのスキルを鑑みて、ご依頼しても良いと思います。
私の場合はいずれも日本側で必ず行うようにしています。
・仕様書や要件をBrSEにビデオ会議で説明、資料を展開
・BrSEが資料などを翻訳し、現地エンジニアに説明
・現地エンジニアが開発
・現地テスターがテスト、我々に検収依頼
・日本側で日本人テスターが検収。場合によっては差し戻しを繰り返す。

このような流れで仕事は進んでいきます。
これは大きなプロジェクトを丸ごと渡すケースもあれば、細かな機能ごとに行われるケース、スプリント(1~2週間分)ごとに行われるケー
ス、様々です。
以上からわかる通り、クライアントは日本人の開発責任者とのみやりとりを行うため、希望がなければ現地の方々とやりとりを行う必要がなく、日本語だけでプロジェクトを進めることができます。

まとめ

以上のようにオフショア開発は進みます。
私は幸い、技術的にも日本語能力的にも、優秀なBrSEと仕事ができていますが、BrSEもスキルはぴんきりです。
上級エンジニアがBrSEをフォローアップするケースもあれば、BrSEが中級エンジニアをフォローアップするケースもあります。
日本側のチームが支えることもあれば、支えられることもあります。

本記事がBrSEの貴重さをご理解頂ける内容になっていたら幸いです。